【お経】
 修証義般若心経大悲心陀羅尼観音経寿量品偈遺教経・甘露門・舎利礼門参同契宝鏡三昧 



  宝鏡三昧
洞山良价禅師(807~869AD)撰

宝鏡三昧(漢文)
如是之法、仏祖密附 汝今得之 宜能保護 銀盌盛雪 明月蔵鷺 類而不斉 混則知処 意不在言 来機亦赴 動成窠臼 差落顧佇 背触共非 如大火聚 但形文彩 即属染汚 夜半正明 天暁不露 為物作則 用抜諸苦 雖非有為 不是無語 如臨宝鏡 形影相覩 汝是非渠 渠正是汝 如世嬰児 五相完具 不去不来 不起不住 婆婆和和 有句無句 終不得物 語未正故 重離六爻 偏正回互 畳而成三 変尽為五 如荎艸味 如金剛杵 正中妙挾 敲唱双挙 通宗通途 挾帯挾路 錯然則吉 不可犯忤 天真而妙 不属迷悟 因縁時節 寂然昭著 細入無間 大絶方所 毫忽之差 不応律呂 今有頓漸 縁立宗趣 宗趣分矣 即是規矩 宗通趣極 真常流注 外寂内搖 繋駒伏鼠 先聖悲之 為法檀度 随其顛倒 以緇為素 顛倒想滅 肯心自許 要合古轍 請観前古 仏道垂成 十劫観樹 如虎之欠 如馬之馵 以有下劣 宝几珍御 以有驚異 狸奴白牯 羿以巧力 射中百歩 箭鋒相値 巧力何預 木人方歌 石女起舞 非情識到 寧容思慮 臣奉於君 子順於父 不順不孝 不奉非輔 潜行密用 如愚如魯 只能相続 名主中主

宝鏡三昧(和文)
如是の法、仏祖密に附す、汝今之を得たり、宜しく能く保護 (ほうご)すべし、銀盌に雪を盛り、 明月に鷺を (かく)す、類して (ひとし)からず、混ずるときんば処を知る、 (こころ)言に在ざれば、来機亦赴く、 動ずれば窠臼 (かきゅう)を成し、差えば顧佇 (こちょ)に落つ、背触共に非なり、大火聚の如し、 但文彩に (あらわ)せば、即ち染汚 (ぜんな)に属す、夜半正明、天暁不露、物の為に則となる、用いて諸苦を抜く、 有為に非ずといえども、是れ語なきにあらず、宝鏡に臨んで、形影 (ぎょうよう)相い覩るが如し、汝是れ (かれ)に非ず、 渠正に是れ汝、世の嬰児の五相完具 (がんぐ)するが如し、不去不来、不起不住、婆婆和和、有句無句、ついに物を得ず、語未だ正しからざるが故に、 重離六爻 (じゅうりりっこう)偏正回互 (へんしょうえご)、畳んで三と成り、変じ尽きて五と為る、  荎艸 (ちそう)の味の如く、金剛の杵の如し、正中妙挾、敲唱 (こうしょう)双び挙ぐ、宗に通じ途に通ず、 挾帯挾路、錯然 (しゃくねん)なるときんば吉なり、犯忤 (ぼんご)す可からず、天真にして妙なり、迷悟に属せず、 因縁時節、寂然として昭著す、細には無間に入り、大には方所を絶す、毫忽の差い、律呂に応ぜず、今頓漸あり、 宗趣を立するによって、宗趣分る、即ち是れ規矩なり、宗通じ趣極まるも、真常流注 (るちゅう)、外寂に内搖くは、繋げる駒伏せる鼠、先聖之れを悲しんで、 法の檀度と為る、其の顛倒に随って、 ()を以って素と為す、 顛倒想滅すれば、肯心自ら許す、古轍に合わんと要せば、請う前古を観ぜよ、仏道を成ずるに (なんな)んとして、十劫樹を観ず、虎の欠けたるが如く、馬の (よめ)の如し、 下劣あるを以って、宝几珍御、 驚異あるを以って、狸奴白牯、 羿は巧力 (ぎょうりき)を以って、射て百歩に ()つ、 箭鋒 (せんぽ)相い値う、巧力なんぞ預らん、木人まさに歌い、石女起って舞う、情識の到るに非ず、むしろ思慮を容れんや、臣は君に奉し、 子は父に順ず、順ぜざれば孝にあらず、奉せざれば輔に非ず、潜行密用は、愚の如く魯の如し、只能く相続するを、主中の主と名づく。




宝 鏡 三 昧 (ほう きょう ざん まい)

如是の法、仏祖密に附す、汝今之を得たり、宜しく能く保護すべし、銀盌に雪を盛り、明月に鷺を蔵す、類して斉からず、混ずるときんば処を知る、 意言に在ざれば、来機亦赴く、動ずれば窠臼を成し、差えば顧佇に落つ、背触共に非なり、大火聚の如し、 但文彩に形せば、即ち染汚に属す、夜半正明、天暁不露、物の為に則となる、用いて諸苦を抜く、 有為に非ずといえども、是れ語なきにあらず、宝鏡に臨んで、形影相い覩るが如し、汝是れ渠に非ず、 渠正に是れ汝、世の嬰児の五相完具するが如し、不去不来、不起不住、婆婆和和、有句無句、ついに物を得ず、語未だ正しからざるが故に、重離六爻、偏正回互、畳んで三と成り、変じ尽きて五と為る、  荎艸の味の如く、金剛の杵の如し、正中妙挾、敲唱双び挙ぐ、宗に通じ途に通ず、挾帯挾路、錯然なるときんば吉なり、犯忤す可からず、天真にして妙なり、迷悟に属せず、因縁時節、寂然として昭著す、 細には無間に入り、大には方所を絶す、毫忽の差い、律呂に応ぜず、今頓漸あり、宗趣を立するによって、宗趣分る、即ち是れ規矩なり、宗通じ趣極まるも、真常流注、外寂に内搖くは、繋げる駒伏せる鼠、 先聖之れを悲しんで、法の檀度と為る、其の顛倒に随って、緇を以って素と為す、顛倒想滅すれば、肯心自ら許す、古轍に合わんと要せば、請う前古を観ぜよ、仏道を成ずるに垂んとして、十劫樹を観ず、 虎の欠けたるが如く、馬の馵の如し、下劣あるを以って、宝几珍御、驚異あるを以って、狸奴白牯、 羿は巧力を以って、射て百歩に中つ、箭鋒相い値う、巧力なんぞ預らん、木人まさに歌い、 石女起って舞う、情識の到るに非ず、むしろ思慮を容れんや、臣は君に奉し、子は父に順ず、順ぜざれば孝にあらず、奉せざれば輔に非ず、潜行密用は、愚の如く魯の如し、只能く相続するを、主中の主と名づく。


(漢和対)


如是之法 仏祖密附 如是之法、仏祖密に附す、
汝今得之 宜能保護 汝今之を得たり、宜しく能く保護(ほうご)すべし、
銀盌盛雪 明月蔵鷺 銀盌(ぎんわん)に雪を盛り、明月に鷺を蔵(かく)す、
類而不斉 混則知処 類して斉からず、混ずるときんば処を知る、
意不在言 来機亦赴 意(こころ)言(こと)に在ざれば、来機亦赴く、
動成窠臼 差落顧佇 動ずれば窠臼(かきゅう)を成し、差えば顧佇(こちょ)に落つ、
背触共非 如大火聚 背触(はいそく)共に非なり、大火聚の如し、
但形文彩 即属染汚 但文彩(もんさい)に形せば、即ち染汚(ぜんな)に属す、
夜半正明 天暁不露 夜半正明、天暁不露、
為物作則 用抜諸苦 物の為に則(のり)と作る、用いて諸苦を抜く、
雖非有為 不是無語 有為に非ずと雖も、是れ語無きにあらず、
如臨宝鏡 形影相覩 宝鏡に臨んで、形影(ぎょうよう)相い覩るが如し、
汝是非渠 渠正是汝 汝是れ渠(かれ)に非ず、渠正に是れ汝、
如世嬰児 五相完具 世の嬰児(ように)の五相完具(がんぐ)するが如し、
不去不来 不起不住 不去(ふこ)不来、不起不住、
婆婆和和 有句無句 婆婆和和(ばばわわ)、有句無句、
終不得物 語未正故 終いに物を得ず、語未だ正しからざるが故に、
重離六爻 偏正回互 重離六爻(じゅうりりっこう)、偏正回互(へんしょうえご)、
畳而成三 変尽為五 畳んで三と成り、変じ尽きて五と為る、
如荎艸味 如金剛杵 荎草(ちそう)の味の如く、金剛の杵の如し、
正中妙挾 敲唱双挙 正中妙挾(しょうちゅうみょうきょう)、敲唱(こうしょう)双び挙ぐ、
通宗通途 挾帯挾路 宗に通じ途に通ず、挾帯挾路(きょうたいきょうろ)、
錯然則吉 不可犯忤 錯然(しゃくねん)なるときんば吉なり、犯忤(ぼんご)す可からず、
天真而妙 不属迷悟 天真にして妙なり、迷悟に属せず、
因縁時節 寂然昭著 因縁時節、寂然として昭著す、
細入無間 大絶方所 細には無間に入り、大には方所(ほうじょ)を絶す、
毫忽之差 不応律呂 毫忽(ごうこつ)の差い、律呂(りつりょ)に応ぜず、
今有頓漸 縁立宗趣 今頓漸有り、宗趣を立するによって、
宗趣分矣 即是規矩 宗趣分る、即ち是れ規矩なり、
宗通趣極 真常流注 宗通じ趣極まるも、真常流注(しんじょうるちゅう)、
外寂内搖 繋駒伏鼠 外寂に内搖くは、繋げる駒伏せる鼠、
先聖悲之 為法檀度 先聖之れを悲しんで、法の檀度と為る、
随其顛倒 以緇為素 其の顛倒に随って、緇を以って素と為す、
顛倒想滅 肯心自許 顛倒想滅すれば、肯心自ら許す、
要合古轍 請観前古 古轍に合わんと要せば、請う前古を観ぜよ、
仏道垂成 十劫観樹 仏道を成ずるに垂んとして、十劫樹(じっこうじゅ)を観ず、
如虎之欠 如馬之馵 虎の欠けたるが如く、馬の馵(よめ)の如し、
以有下劣 宝几珍御 下劣有るを以って、宝几珍御(ほうきちんぎょ)、
以有驚異 狸奴白牯 驚異有るを以って、狸奴白牯(りぬびゃっこ)、
羿以巧力 射中百歩 羿(げい)は巧力(ぎょうりき)を以って、射て百歩に中(あ)つ、
箭鋒相値 巧力何預 箭鋒(せんぽ)相い値う、巧力何んぞ預らん、
木人方歌 石女起舞 木人方に歌い、石女(せきじょ)起って舞う、
非情識到 寧容思慮 情識の到るに非ず、寧ろ思慮を容れんや、
臣奉於君 子順於父 臣は君に奉し、子は父に順ず、
不順不孝 不奉非輔 順ぜざれば孝にあらず、奉せざれば輔に非ず、
潜行密用 如愚如魯 潜行密用は、愚の如く魯の如し、
只能相続 名主中主 只能く相続するを、主中の主と名づく、

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