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新年おめでとうございます。 皆様にとりまして輝かしい一年となりますよう祈念致します。
一口に「仏さま」と言っても実際には数多くの仏さまがいらっしゃいます。
大きく分けると「如来・菩薩・明王・天・声聞」になります。
1)「如来(にょらい)」
釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来、薬師如来など。
2)「菩薩(ぼさつ)」
観音菩薩、地蔵菩薩、文殊菩薩、虚空菩薩、など。
3)「明王(みょうおう)」
不動明王、愛染明王、孔雀明王、烏枢沙摩明王など。
4)「天(てん)」
大黒天、帝釈天、毘沙門天、梵天、多聞天など。
5」「声聞(しょうもん)」
阿羅漢や悟りを開いた高僧、比丘、比丘尼など。
一切皆苦というこの娑婆世界で苦悩し、もがき生き続けるのがわれわれ人間の宿命で、人に八万四千の煩悩があり、同じ数だけの苦悩が存在します。そんな人間にとって、何よりも必要なことが抜苦と与楽で、その問題解決のためにわれわれ仏教徒が常に拠り所としているのが様々な「仏さま」です。
今年は、その諸仏の代表格「十三仏」から学んでみたいと思います。
• 「不動明王」 【初七日】・・・・降伏
• 「釈迦如来」 【二七日】・・・・悟
• 「文殊菩薩」 【三七日】・・・・智慧
• 「普賢菩薩」 【四七日】・・・・知徳
• 「地蔵菩薩」 【五七日】・・・・抜苦、与楽
• 「弥勒菩薩」 【六七日】・・・・久遠仏
• 「薬師如来」 【七七日】・・・・健康
• 「観音菩薩」 【百ケ日】・・・・抜苦、与楽
• 「勢至菩薩」 【一周忌】・・・・法導
• 「阿弥陀如来」 【三回忌】・・・・冥福
• 「阿閦如来」 【七回忌】・・・・忘悪
• 「大日如来」 【十三回忌】・・・清浄
• 「虚空蔵菩薩」 【三十三回忌】・智慧 広大無辺な慈悲
と、法力をもって抜苦と幸福を招いてくださる諸仏です。
「不動明王」
初回は「不動明王」です。
大日如来の化身ともいわれ十三仏では初七日の導師をつとめます。また、酉年生まれの守り本尊でもあります。不動明王は空海(弘法大師)により唐より密教とともに日本に伝えられたといわれ、大日如来の化身でもあり、不動明王を祀り御本尊とされているのはほとんどが真言宗系寺院となっています。
明王の「明」とは、「真言」を意味しており、真言(マントラ)の力を体現した仏さまで、その真言は「ノウマクサンマンダ バザラダン カン」です。最後の「カン」は「不動心」の意味で、不動心と不動堅固の行によって、煩悩の深い者を大空三昧(さとり)へ導いてくださる明王です。また「不動」の意味としては、釈尊が悟りを求め菩提樹の下に座し「我、悟りを開くまではこの場を立たず」と決心された「不動心」ともいわれます。そのとき、世界中の魔王が釈尊を挫折させようと押しかけたのですが、釈尊は穏やかに降摩の印を結び摩王の群れを降伏させたといわれます。右手に宝剣左手に羂索(けんさく)という縄を持ち、猛火の火炎を背にした実に恐ろしい忿怒の相をした姿で、背後の炎は迦楼羅焔(カルラエン)といい、迦楼羅とは、毒を持った動物を好んで食べるという伝説上の鳥のことです。その火焔の如く烈火の怒りの形相で人の心の内に迫ってきます。右手に持った剣は宝剣で、宝剣とは正しい仏教の智慧からできている利剣のことです。その利剣で迷いや邪悪の心を一刀両断にしてしまうのです。左手の羂索は智慧の縄で、悪事を働く者を縛束し、その悪い心を智慧の心に変えてしまうのです。一見恐ろしい憤怒のお姿はまさに邪心を智慧に変えるための怒り(叱り)にほかならないのです。
あらゆる悪魔を降伏(ごうぶく)し、すべての障害を打ち砕き、仏道に従わない者を無理矢理にでも導き済度するためなのですが、その姿が釈尊の心印だと思うと改めて親しみを感じます。不動明王の信仰が特に広まったきっかけは平安時代の平将門の乱だったといわれます。将門を調伏させるために京都高尾山神護寺の不動明王像を借りて千葉の成田の地で調伏の護摩行を修行した結果その願いが叶ったのです。手に負えない将門に勝ったことで「新勝寺」が創建され、その不動明王がそのままご本尊さまになったそうです。その後、鎌倉時代の元寇(げんこう)では全国各地で蒙古軍撃退の祈祷が行われましたがその主役を勤めたのが不動明王でした。その御利益が"神風"となって現れみごと敵軍を壊滅させ、不動明王信仰がいよいよ盛んになっていったのです。
現代でも全国各地の霊場には多くの不動明王がご本尊として祀られています。厄難回避から心願成就まであらゆる願い事に対する庶民信仰として人気で、中でも特に病気平癒の御利益があるとして薬師如来とともに親しまれています。観音様のような慈愛に満ちた慈悲もあれば、一方このような厳しい怒りの慈悲もあるのです。怒りの慈悲とはすなわち不条理に対する怒りです。不条理に満ちあふれているのがこの人の世で、同じ人間なのに理不尽な差別、不幸に陥っている人がなんと多いことでしょう。そんな不条理の元を忿怒の宝剣で断ち切ってくれる仏こそ不動明王なのです。
合掌
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