・・・・・・平成26年4月・・・・・・

ピグマリオン
 「ピグマリオン」は、ギリシャ神話に登場する古代キプロス島の王の名です。彫刻家でもあるピグマリオンは、現実の女性に失望していましたが、あるとき理想の女性を彫刻で造りあげます。すると、そのあまりの美しさに、彫刻の像に恋をしてしまいます。朝に夕に話しかけ、心身が衰弱するほど苦悶するピグマリオン王。毎日、なにも手につかず、「もし彼女を手に入れられないのなら、崖から飛び降り死んでしまおう」、と独り言を言いいます。愛の女神アフロディテはその言葉を聞き、彼のもとに現れた。ピグマリオンは、彫像が人間になることをアフロディテに願うと、その持ち続ける想いの深さを知ったアフロディテは、像に命を吹き込み、ガラティアという名の女性を誕生させます。ついにピグマリオンは、人間の命を吹き込まれたガラティアと結婚して、幸せに暮らしました。ピグマリオンは女神アフロディテに感謝して、世界中の神殿のためにアフロディテの像を作って過ごしたそうです。このことは、「何事も今に甘んじることなく、常に理想とすることに信念を持ち続ければ、やがてその理想が現実のものになる」という、心理学の人間が期待されたとおりに効果を出す「ピグマリオン効果」の由来になっているお話です。
 さて、愛される人(アフロディテ)がいいのか、愛する人(ピグマリオン)がいいのか。ゲーテが書いた童話には、ある女性が赤ん坊を生んだ。そのとき、神様が願いをかなえてあげる、と彼女に言った。母親は「この子が誰からも愛される子になりますように」と言った。神様はその言葉を聞き入れ、赤ん坊は誰からも愛される子に育った。
 しかし、誰からも愛されるので、わがままで性格の悪い子に育ってしまった。いくら性格が悪くても誰からも愛されるのだから、問題はない。大人になって、仕事をしなくても誰かが彼の面倒をみたし、いくら他人を傷つけても愛されるのである。
 母親は気がついた。そこでもう一度、神様にお願いした。「誰をも愛せる人間になるように」と。
 とたんに、彼の周りから人がいなくなり、食べるものにも困るようになってしまった。しかし、彼は幸福であった。なぜなら、愛することを知ったからである。徐々に、彼のまわりに人が集まってきた。ピグマリオンの話の根底にあるものは、愛の力、ということです。愛すれば、それに答えてくれる。愛すれば、彫像までもが生身の人間になってしまうのである。
 ピグマリオン効果については、1964年にアメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって実験された教育心理学の心理的行動の1つで、教師の期待によって学習者の成績が向上すること、別名、教師期待効果ローゼンタール効果などとも呼ばれていますが、愛され認められ、期待されると、人間は期待された通りに成果を出す傾向があると、私も思います。

合掌


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