・・・・・・令和2年08月・・・・・・

多神教
日本人に、「あなたの宗教は?」と質問すると、なんと62%が無宗教だと答えるそうです。宗教が生活の核になっている外国人からみて「無宗教」という言葉は驚きなのです。しかし、日本人が自らを「無宗教」という時、それは「特定の宗教の信者ではない」という意味であって、キリスト教徒やイスラム教徒が思い浮かべるような「無神論者」とはまったく別なのです。

今月は、そんな日本人の不思議?な宗教観について考えてみます。結婚式は神社やキリスト教会で行なったり、葬儀は仏式で行なったり、お正月の初詣はお寺でも神社でも特にこだわりは持ちません。クリスマスを祝ったり、お釈迦さまの花まつりを祝ったり、一神教を主とした外国人からみればまさに日本人の信仰上のアイデンティティーは理解できないでしょう。お盆やお彼岸は仏教行事です。神社の祭礼は神道行事です。しかし、日本人は七五三や雛祭り節句といった文化行事と同等の感覚でしか捉えていません。外国人からみれば、日本人の宗教感覚はまさに異質であり理解できません。

その訳は、日本は多神教文化の社会だからです。自然界の諸事物に霊魂や精霊が宿っているという考え方、これをアニミズムといいますが、そんな八百万(やおろず)の神々がおわしますのが日本なのです。特に、日本人の心に一番根付いているのは神道(しんとう)です。神道ではあらゆるものを「神」との結びつきと見なし、自然崇拝から始まり、自然と融和しながら諸々の神を崇め、謙遜とあいまさと共存共栄を尊ぶという神道精神が生まれました。つまり、日本の文化は、神道の自然信仰がその基盤であり、更に、死者の霊を神様として崇める御霊信仰と、民族の統治者を敬う皇祖霊信仰が派生してきたと考えられます。古事記も日本書紀も、神話の記述がそのまま歴史の記述へとつながっていて、天皇家の由来を神話時代から語り始め、やがて実在した天皇へつながり、初代神武天皇が即位したのは紀元前660年のことです。神道は、古来あった神々への信仰が、仏教、儒教などの影響を受けて展開してきたと考えられます。神道には最初から明確な教義があったわけではなく、古来の伝統的な信仰や儀礼が「神道」として認識されるようになったのは、仏教伝来以降のことと考えられ、538年、百済の聖明王の使いで訪れた使者が、欽明天皇(29代)に金銅の釈迦如来像や経典、仏具などを献上したことが仏教伝来のはじまりといわれています。日本に初めて仏教が入ってきたとき、天皇は神道を受け継ぎながら、仏教徒となりました。そして、初の女帝推古天皇(33代)は仏教を保護し国教に位置付けました。(9月法話に続きます) 

合掌


来月も予定しています。光泰九拝
・・・・最新法話

ページ先頭へ

Copyright©2004-2020 Zenchouji Temple.Allrightsreserved.